”EMI”と”EMS” | ノイズ対策.com

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”EMI”と”EMS”

EMC(Electro-Magnetic Compatibility:電磁両立性)は、
妨害電波を規制するEMI(Electro Magnetic Interference)と
外来ノイズの耐性を示すEMS(Electro Magnetic Susceptibility)
の2面があります。

EMCの規格としてクローズアップされやすいのはEMIです。

電気機器から放出される不要な電気的ノイズを
エミッション(emission)と呼び、
電磁波が特に問題になりやすくノイズ対策と言えば不要輻射測定を
連想される方が多いと思います。

CISPRやVCCIで規定され、設置環境によって定められたリミットを守らなれば
製品を販売出来ず、多くの関係を悩ませます。

EMSはイミュニティ(immunity)とも呼ばれ、
電気機器が電気的ストレスのどの程度耐性を持っているかを指します。

国際的な電気関係の標準基準規格を定めるIECが規定した
IEC61000-4シリーズなどで試験されます。

ただし、
IEC61000-4シリーズに定められた最低レベルの試験をパス出来なくても
製品化出来ます。

では
 ”IEC61000-4シリーズの規格自体一体何のため存在するのか?”
がポイントになります。


次回はEMSの本質に迫ります。


EMS障害は動作不良 | ノイズ対策.com

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EMS障害は動作不良

●”EMS”の本質は規格にあらず

前回のおさらいから入ります。

EMIの場合は、
周辺機器に迷惑になるので法規制で排除されます。

EMSの場合は、
国際標準と言って良いIEC61000-4シリーズがありますが、
特に規制は無く試験方法を標準化しただけに過ぎません。


●EMS耐性不足 = 動作不良&機能低下

では耐性が無いとどうなってしまうのかを考えてみます。

EMSの耐性が無いと外来ノイズにあてられ
破壊,停止,品質劣化が発生します。

 ・破壊
   ノイズによって配線の焼き切れや誤動作で修復不能な故障に至る。

 ・停止
   ノイズによってプログラムやシーケンサーが止まってしまう。

 ・品質劣化
   アナログの入出力にノイズが映り込んだり、
   通信がノイズよって一時的に途切れる。


即ち
EMS障害は外来ノイズによって引き起こされる動作不良と機能低下です。

当然、動作不良は製品回収やリコールに発展しかねない問題です。

そして、外来ノイズに定形は有りません。

ありふれた現象から様々な外来ノイズが発生するからです。

 ・摩擦→帯電→静電気
 ・雷→商用交流電源のサージ
 ・寿命の来た蛍光灯の明滅→放電による電磁波
 ・電子レンジ→電磁波
 ・大型モータ(掃除機,洗濯機)→商用交流電源へのノイズ印加
 ・ケーブルの並走→電磁誘導によるノイズ拡散
 ・電気使い過ぎ→商用交流電源の品質劣化

これらは日常何処にでもある自然若しくは人為的現象です。

EMS対策とは、
 使用される現場で発生する外来ノイズにより、機能を喪失すること無く
 電気機器を動作させることです。


次回は、電気機器と外来ノイズの関係を掘り下げます。


電気機器と外来ノイズ | ノイズ対策.com

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電気機器と外来ノイズ

電気機器は電気によって動作します。

外部から電子回路にノイズが侵入し、悪影響を与えるのがEMS障害です。

ノイズの侵入で発生する障害は大きく分けて2つに別れます。

@破壊
 ・ノイズが侵入し破壊される。
  例)静電気による短絡破壊。
  例)雷の影響で電源ユニットが壊れる。

 ・ノイズを増幅した回路が破壊される。
  例)音響アンプやスピーカーの破壊。

A誤動作
 ・侵入した電荷・電波の影響で電気回路が一時的に機能停止する。
  例)シャーシに触れると静電気で外部接続USBハードディスクが
    一時的にアクセス不能になる。
  例)電子レンジに近寄るとBluetooth機器が通信不能になる。
  例)掃除機を動作させると周辺機器が再起動する。

 ・侵入した電荷・電波の影響で電気回路が誤動作する。
  例)メモリや時計のデータが化けたりクリアされる。


上記の例は、どの現象も日常的に体験していると思います。

だからと言って、
身の回りの電化製品がEMS対策を怠っているわけでは有りません。

電気機器は電気で動いている以上、
外来ノイズ(電気)が加われば必ず不具合が起こる危険をはらんでいます。

外来ノイズに何処まで対処すれば製品として機能するかを見極めることが、
EMS対策です。


即ち、
EMS対策は元より黒白はっきり決着が着く性質ではありません。




EMS対策について | ノイズ対策.com

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EMS対策について

ノイズ対策をする対象の製品の様々な設置環境・用途・ユーザーを
理解することも必要です。


例えば、
出入り記録用の端末を作ったとします。


革靴を履き冬場の着膨れた状態で満員電車から出て来た人が、
ファーストタッチで触れる可能性のあるような端末なら、
静電気試験(IEC 61000-4-2)Level 4若しくはそれ以上の強度が
必要かもしれません。

逆に、
温度湿度管理が出来ていてサーバ管理者が想定出来る
サーバ室の入り口で使用する場合、
Level 2でも対策しすぎかもしれません。


同じ物を作っても想定でEMS対策は変化します。



EMS障害調査編 - 障害の切り分け方法 - | ノイズ対策.com

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調査編 - 障害の切り分け方法 -

今回はEMSに関するトラブルの調査方法のコツを解説します。

EMS障害は環境不適合に含まれますが、
EMS障害に起因するトラブルであると
如何に早く見抜かがポイントとなります。

EMS障害は他の不良に比べ顕著な傾向が無く、
経過観察をしているうちに被害が蔓延してしまうパターンに
嵌り込む危険が高いのです。


 【動作不良要因と発生傾向】

 ・ハード設計不良,ソフト不良
  製品投入前の評価が難しい機能,タイミングで発生。

    リリース後の機能追加も注意。
 ・初期不良

  製品投入後3ヶ月ほど要注意。製造ロットで傾向が出る。
 ・経年劣化

  製品の返品状況を観察。消耗品の劣化具合と長寿命部品の修理増加
    (設計寿命との乖離)に注意。

 ・環境不適合
  外気温,湿度,外部電源に関わるものは傾向が掴みやすい。
  EMS障害は傾向が掴み難い。


●EMS障害は他の不良に比べ顕著な傾向が無い
EMS障害は傾向が掴み難い理由を掘り下げます。

ハード設計不良,ソフト不良は、
動作不良時に発生した現象とその要因の関係が明瞭で、
突き詰めることで発生確率は100%に近づきます。

初期不良や経年劣化も統計を採ることで傾向を掴めます。

環境不適合のうち、外気温,湿度,外部電源に関わるものは
環境試験をキツ目に行うことでウィークポイントが分かります。

対してEMS障害は、外来ノイズ発生要因がない限り再現しません。

また、
外来ノイズに当てられるタイミングによって
動作不良の内容、発生確率が変化します。



EMS障害調査編 - 事象の観察方法 - | ノイズ対策.com

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調査編 - 事象の観察方法 -

●EMS障害を解く手がかり
不具合の発生した現場の情報収集と現場検証を素早く行います。


単純ですが、
外来ノイズがあった状況が残っている段階で
調査出来るかが明暗を分けます。

EMS障害の対策で難しいのは、
外来ノイズの要因が推測しきれない状況に陥り易いのと、
個体によって発生確率が全く違うことです。

 例)電波の干渉を起こす要因(電子レンジなど)が把握出来なければ、
      調査は難航する。
 例)静電気の伝達経路がケースのバリであった場合個体差が著しくなる。

即ち、
  @発生した現象
  A発生しやすい調査対象の特定
  B発生しやすい環境
を正確に収集するためには、スピードが大切になります。

 【情報収集ポイント】
 ・発生した現象の詳細
   (停止状態,停止時刻,イベントログ,異音,発熱など)
 ・温度,湿度,天気(乾燥,雨,落雷など)
 ・接続状況(インターフェイス,電源,アース)
 ・トリガになったと疑われる現象の確認 
   (筐体タッチ,電熱器や照明のオフオン,蛍光灯のジリジリ音など)
 ・他の電気機器で異常
   (音響機器のノイズや画面のフリッカなど)は無かったか

●情報共有を徹底しよう
情報収集や現場検証したらその情報を
可能な限り多くの関係者で共有すると良いでしょう。

外来ノイズの正体を特定するのはとても大変です。

外来ノイズの影響を受けやすい製品単品で使っていた
ハード,ソフト開発者や試験担当者が良く似た現象を
知っている場合があります。

観察眼が肥えていることもあり、
この部分を触ると再現するなど大変貴重な情報が
得られるとがあります。



EMS障害再現編 - 再現検証の考え方 Part 1 - | ノイズ対策.com

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再現編 - 再現検証の考え方 Part 1 -

ある製品でEMS障害が発生し、
調査編で説明した初期調査が終わったら、
外来ノイズの正体を付きとめ、再現させます。


●再現とは?

外来ノイズは電気です。

その場に電荷がとどまることはありませんので、
初期調査の情報から外来ノイズの種類,強さを推理します。

そして、外来ノイズの発生方法に当たりを付け、
そのノイズで同じ障害が起きるか検証します。

再現が出来たら、
外来ノイズと発生環境に矛盾が無ければ再現完了となります。


●破壊の伴う障害

EMS障害の内、破壊の伴う時の再現は比較的容易です。

ただし、緊急性は非常に高いと言えますので、
スピード重視で再現させます。

故障した部品を特定し、
EMS障害の痕跡(短絡など電気的な異常,焦げ跡)や故障解析を進めす。


●痕跡は明確だが
故障状況=故障原因で無いことを常に頭入れて検証します。

例えば、
故障したIC内部を調査した結果、
内蔵していた4kV静電気対策用ダイオードが
導通破壊してグランドと短絡していたとします。

状況的には外部に15kV静電気対策用ダイオードを付けて
強化したくなりますが、少し考えましょう。

まず考えることは、
4kV静電気対策用ダイオードが何故壊れたかです。

 @ 4kVを超える静電気があった。
 A 負電圧を伴う外来ノイズがあった。
 B 定格を超える電圧が印加された。

静電気対策用ダイオードは、
静電気の様な単発のサージノイズからICを守ってくれますが、
電荷量が多いサージノイズや連続するバーストノイズに
さらされると吸収しきれず壊れます。

従って、
ノイズのモデルが本当に”静電気だったか”から入ります。

静電気だったとして、
なぜ4kV越えの静電気が入ったかを考える必要があります。

明確な静電気侵入ルートが分からない場合、
他も同様の破壊が起こるとみなし、
基板全体の静電気対策を1ランク上げる必要が生じます。

明確な静電気侵入ルートが分かっても、
再現実験でその静電気対策レベルを確認する必要があります。



次回は、痕跡の残っていない場合の対応を見て行きます。



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