プリント基板技術者のつぶやき

高速信号関係

誘電正接と表皮効果

プリント基板パターンに信号を通すと波形がなまったり信号振幅が小さくなります。

波形がなまるということは高周波の成分が小さくなっているということです。

信号振幅が小さくなるのは導体の抵抗成分などによる純粋な信号ロスによって小さくなる部分もありますが、それ自体はかなり小さい量です。

それよりも、波形がなまる事によって次の信号の立ち下がりまでに本来の信号振幅まで立ち上がりきっていないため、信号振幅自体が小さくなってしまう状態が高周波信号になるほど顕著に発生してしまいます。

これらの高周波成分の損失には、誘電正接による誘電損失と表皮効果などによる導体損失主なものになります。

誘電正接は tanδ・タンジェントデルタ・タンデル などと呼ばれ、配線導体のすぐ外側にある誘電体の特性値です。

誘電体に高周波電場が加わった時に電気エネルギーの一部が熱になってしまう比率を数値で表しているものです。

tanδの分母側には全体電流で GND間の寄生抵抗に流れる電流が分子側になり、誘電体に漏れ出てしまう電流の比率ともいえます。

現在多く使われている FR-4基板では 0.018(@1GHz)程度の値で、周波数が高くなるほど大きな値になって行きます。

損失数値なので小さい方がロスが少ないものになり、1GHzを越えるような超高周波信号回路向けの基板としては tanδ=0.005(@1GHz)前後の低誘電正接の特殊基板が使われる事があります。

低誘電正接の誘電体材料としては PPS樹脂などのポリマー系樹脂材料でプリント基板材料に適した低吸水・高耐熱な低誘電正接材料が開発されてきています。

表皮効果とは高周波信号になるほど導体の表面にしか電流が流れなくなる現象です。

導体の中心部の電流は周囲にも同じ方向の電流が流れるために相互インダクタンスの効果によって電流の流れを妨げられてしまいます。

それに対して、導体表面は電流の流れない外気や絶縁体に多く触れているため相互インダクタンスによる電流を妨げる効果が少なくなり結果的に電流が集中することになります。

配線断面が四角の場合の導体の角は 270度方向外周に隣接電流が流れないために特に電流が集中することになります。

導体の中心部には高周波電流が流れないため、高周波信号に対する導体の有効な断面積が小さくなってしまう事で実質的な配線抵抗値が大きくなって損失になってしまいます。

抵抗値は周波数の 1/2乗に比例して大きくなります。

電流が流れる実効的な表面の厚みを「表皮深さ」と言いますが、
10MHzで 21um,
100MHzで 6.6um,
 1GHzで 2um 程度まで小さくなります。

商用周波数の 60Hz では 8.5mm 程度ですが、
長距離・大電流を伝送する商用電源伝送ケーブルでは
太いケーブルにしても表層しか電流が流れないため、
被覆線の束にするなどの工夫がされています。

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